Sicario_poster



いやー、落ち着いて映画ディスク見るなんて何か月、いや何年ぶりだろう。
というのは些か大げさだけど、でも多分2年は見てないんじゃないか。
その間に買い足したディスクが数枚、録画は数えるのが不可能なほど。
漸く余裕が出来たこの連休に、とりあえずディスクから消化する事にした。
勿論、我が愛する兄貴ことベニシオ・デル・トロの出演の作品からね。

その中でも一番新しいのがこれ。今年の4月、日本では公開になった作品だが、
その内容から恐らく、上映館は限られた場所になったのではないか。
少なくとも私のとこには来なかったのでは。まあそれを調べる余裕もなかったんだけど。

主人公には何の任務かはっきりしないまま、また解りかければかけるほど苛立ち、
しかし結局はその任務の真ん中にいることを許されぬまま話は終わる。
狂言回しが狂言回しのまま終わるといった風体ではあるが、その狂言回しこそが
主人公になってしまっているので、全体像がぼやけたまんま、という印象が残る。
確かにショッキングな話だし、それこそ主人公には人生を揺るがす衝撃なのだけど、
そこんとこがさあ、何とも巧く伝わってこないんだよなあ、ざっくり言うと。
何がいけないのかよくは解らないが、確かにこれではオスカーには届かないと思った。

私は兄貴の「トラフィック」を何度となく見過ぎているので、比較するのもどうかだけど、
あっちに比べるとやっぱし衝撃の度合いが低い。
それと語り口が妙にゆったりして感じられ、緊張感がいまいち出て来ない。
賞を取った撮影は凄いと思うし、あの暗闇での映像とか素晴らしいのだけど。でも。
3日間のストーリーにしては何故だか、間延びした長さを感じたのよねえ。

兄貴だけではなく全体として台詞が少ないのだけど、フツーこういう作品の場合、
それがピンと張り詰めた空気感を醸し出すのに、その辺もイマイチ伝わらず。
で、いくつか考えてみた。

1.主人公の相棒が邪魔w
いや、こう言うと元も子もないが、私には凄く邪魔に思えた。
あいつがいるから、デルトロ兄貴=アレハンドロとエミブラ=ケイト間の緊張感が削げる。
彼女が何処かで彼に引かれているからこそ、最終的に彼の恐ろしさが際立つのだ。
話としてどうしても必要なのは解るが、あの3人をもっとクローズアップしてほしかった。

2.ジョシュりんの使い方が雑ww
もったいないっつーかね。ジョシュ・ブローりんをもっと上手に使い倒してほしかった。
もともと彼は、寡黙な兄貴の対照にいる人物として描かれているのだから、
喋るシーンを増やすとか、ステレオタイプだとしても、もう少しエキセントリックにするとか
何かやりようがあったと思う。あれではせっかくの巧い役者が勿体ないのでは。

3.ケイトが寂しさを紛らわそうするシーンは必要なのか
あれさあ、ちょっと何ともお粗末っていうかさあ、ぶっちゃけいらなくないか?
ただ、あそこがあるから、最後のアレハンドロとケイトのシーンが生きてくるとも思うので
全部いらないかって言われると難しいんだけど。

4.あの警察官一家の有り様もイマイチではないのか
ラストシーンに子供がサッカーして、そこで不安を煽る銃撃の音がするってのは、
まあ鉄板でトラフィックの逆を突いたんだと思うけど、それが効果的でない気がした。
あの一家の不幸は描くべきだとは思うけど、果たしてラストシーンかなあと。

まあ、挙げればキリがないんだけど、この辺にしておく。
期待して期待して期待しまくって見た映画だけに、残念に思っちゃったのかもしれない。

兄貴はね、今回、インタビューで自身も言ってるように、徹底的にキャラが解らない。
いい人なのか悪い人なのかが全く解らないような人物。
やってることは勿論ワルなんだけど、悪いだけなのかというね。
彼には彼なりの正義があって、それに従っているだけだと。
まあ解りやすく言えばあれだよ、アレハンドロはね、
カイザー・ソゼだったんだよと、まあそういう話よ。
↑台無し

兄貴節は炸裂してるし、兄貴好きには是が非でもとお勧めしますが、
それ以外の方でしたら、一度トラフィックを見てからこちらを見る事をお勧め。
トラフィック見た方にはぜひ見てもらって、比較してほしい。



恐怖と怒りに満ちた涙の跡に
残りしは
欠片ほどもない過去の愛情。

***


エミリー・ブラント
2016-08-09